特別講演会 -第2回-

本日は、特別講演会第2回目。
三大奇書の図像と映像(日本編) マンガとアニメとエノケン映画」が開催されました。


13:00に開場。
前回とは異なり平日、おまけに天気も悪く、どのくらいのお客様に来ていただけるかと
心配でしたが、13:30には、前回同様大入り満員となりました。


講演会が始まる前と終わった後に流れていた音楽は、

でした。気づいた方はいらっしゃったでしょうか。


講師は前回にひきつづき大塚先生です。


今回は、

という構成です。


第1部では、吉川英治により大衆文学へと再構成された『三国志』『水滸伝』、
またこれを原作として図像化された、横山光輝、さいとう・たかお等のマンガの紹介。
水滸伝』の閻婆惜の取り上げ方に見るそれぞれの描き方の違い、などのお話もありました。


第2部では、まず、昭和初頭から現在に至るまでの図像化として、
宮尾しげを手塚治虫等のマンガ、また、アニメ・人形劇・TVドラマが紹介されました。


そしていよいよエノケンです。先生の解説付きで、いくつかのシーンをご覧頂きました。
この型破りな『エノケン孫悟空』、その後の『西遊記』に大きな影響を与えているようです。
ブタの猪八戒、カッパの沙悟浄を定着させたのもこの映画だそうです。
猪八戒はもともと中国ではブタだが、江戸時代にはイノシシとなっていた。
カッパの沙悟浄は日本独自)
他に、日本の『西遊記』の特色としては、女性が演じる三蔵法師がありますが、
これは夏目雅子の個性により始まったものが、定着したのではないか、とのことです。


エノケン孫悟空』(東宝 1940年)
監督・脚本:山本嘉次郎
特撮:円谷英二
出演 孫悟空榎本健一 三蔵:柳田真一 八戒:岸田明
お伽の姫:高峰秀子 妖妖女王:三益愛子 姑娘:服部富子
観音さま:花井蘭子 金鈴:渡辺はま子 袖珍:中村メイ子
東洋の女:李香蘭 支那人形:汪洋


孫悟空 三蔵の前に現れる



猪八戒の登場



沙悟浄登場



袖珍=中村メイコ



オペラガスを浴びて歌いだす孫悟空猪八戒


オペレッタ(ミュージカル?)仕立てで、歌と踊り、パロディにドタバタ、
と娯楽的要素がこれでもか、と詰め込まれています。
アンケートに「インド映画のようだ」と書いて下さった方がいらっしゃいましたが、
なるほど、これほど歌って踊る日本映画はあまりないかもしれません。
上の写真にもありますが、オペラガスを浴びさせられたあと、孫悟空猪八戒
オペラ名曲合戦を繰り広げますし、別のシーンでは、ディズニーの「星に願いを」や
「ハイホー」などが歌われています。
1940年という時代にアメリカのものが堂々と使われていて驚きました。
猪八戒役の岸井明、登場からあのデカさで「♪私はかわいいこぶた」などと笑わせますが、
歌はものすごく上手い。
袖珍(=お伽の国の案内役、袖珍とは小型辞書のこと。インテリ風)役の中村メイコ
当時6歳とのことですが、ホントに変わってない!


・・・と私のどうでもいい感想で長くなってしまってすみません。あまりに衝撃的だったのでつい。


エノケン映画についてのクイズは明日出題します。


というわけで、今回の講演会も盛況のうちに終了いたしました。
ご来場の皆様、本当にありがとうございました。
ご質問等ございましたら、ブログのコメント欄、または電子展示の
ご質問・お問い合わせ」へお寄せください。
(ご質問は、会期中の受付となっていますので、お早めに)


大塚先生とB.K.さんコンビの、息のあったお話と映写、絶妙でしたね。
お疲れ様でした。


企画展会期もあと4日となりました。
まだご覧になってない方、お見逃しなく!

(Y. M.)

第3回 三大奇書雑学王クイズ

23日特別講演会の打ち合わせ中。
大塚先生も映像担当のB.K.さんも、いたって真面目なのですが、
「次、オペラガスいきましょう」
「これはキノコの精ですね」
と聞こえてくる会話はあやしげ・・・いったいどんなお話が繰り広げられるのでしょう。


講演会では、奇想天外『エノケン孫悟空』ほか、日本でマンガ・アニメ・映画に水煮西遊記なった
三大奇書をご紹介します。13:30からですよ。どうぞお忘れなく!



さて、ご好評につき、クイズ第3弾いってみましょう。


三国志』『水滸伝』『西遊記』は、普通名詞のように書名などに使われていますが、次の書名のうち実際にあるものはどれでしょう(複数回答可)。


(1)三国志:①黒帯三国志  ②キネマ三国志  ③やきそば三国志


(2)水滸伝:①奇術水滸伝  ②柔道水滸伝   ③ピンク映画水滸伝


(3)西遊記:①麻雀西遊記  ②水煮西遊記   ③パラレル西遊記


うわぁ、いろいろ想像がふくらんでしまいますね。
正解は月曜日にUPします。お楽しみに!



[正解・解説]

(1)①、②、③
(2)①、②、③ 
(3)①、②、③

ありそうで、なさそうな書名ばかりですが、すべてあります!
(・・・すみません。ひっかけ問題でした。)


国会図書館の所蔵を検索してみると、書名に『三国志』『水滸伝』『西遊記』を含む本は、
   三国志 和図書1628件 和古書331件
   水滸伝 和図書 820件 和古書27件
   西遊記 和図書 491件 和古書18件
実はこんなにあります。

三大奇書のイメージが、いろいろな形に変容し、受容されていることが、
ここにも見ることができます。


さてさて、それぞれの本がどんな内容なのか??

私が一番気になったのは『水煮西遊記』。
なんとこれはビジネス書なのですね。中国書の翻訳です。
組織を構成する人間を、三蔵法師孫悟空猪八戒沙悟浄の4つのタイプに分けて考える、
組織管理の本だそうです。
「水煮」とは、激辛な四川料理の「水煮魚片」に由来しているそうで、
日本語の想像不能な感じからはかなりかけ離れて、
風刺の効いた「激辛西遊記」といったところでしょうか。
同じ著者の『水煮三国志』もあるようです。


その他については、説明は省略させていただきます。
気になる方はネットなどで調べてみてくださいね。

第2回 三大奇書雑学王クイズ

23日に行われる、大塚先生の2回目の講演会が迫ってきました!


そんな今日は、連日のクイズ第2弾です!
第1回の回答は前日の問題のあとに追加しました。
前回の好評に応え(?)またしても三択問題です。
今回は中国語の言い回しに登場する三大奇書人物に関する問題です。(上級です。)


問1 「双方が納得ずくである」という意味の中国語の言い回しに登場する人物は誰でしょう。
   ヒント:「誰かが誰かを打つ」に出てくる人物です。
    ① 黄蓋三国志) ② 沙悟浄西遊記) ③ 一丈青(水滸伝


問2 「逃げおおせられない」という意味の中国語の言い回しに登場する人物は誰でしょう。
   ヒント:「誰かがどこどこから出られない」に出てくる人物です。
    ① 宋江水滸伝) ② 孫権三国志)  ③ 孫悟空西遊記

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[正解・解説]
問1  『三国志』に出ている周瑜(しゅうゆ)が黄蓋(こうがい)をむち打ちにする話から出た言い回しです。周瑜黄蓋を打つ」(周瑜黄蓋といいます。なぜそれが「双方が納得ずく」なのでしょうか?


周瑜黄蓋の属する呉の国に、曹操率いる魏の大群が攻めてきました。このままでは呉が滅ぶと考えた周瑜は、味方の将を投降将として魏の船団の中に送り込み、火攻めで形勢逆転勝利を目指しました。問題は誰を偽の投降将として送り込むかです。ここで名乗りを上げたのが黄蓋。呉の孫家三代に仕える名将です。二人は味方にも内緒で芝居をし、周瑜が味方の前で黄蓋を鞭打ったのでした。そのことを知った曹操は、黄蓋が魏に降伏してきたことを聞いた時、計略とは露にも思いませんでした。
その後、黄蓋の火計は成功!呉と蜀の連合軍は魏に大打撃を与えて、退けたのです。
見ている味方ですら、「痛そう!」と思わせた鞭打ちも、二人にとっては「双方納得ずく」だったのです。(「苦肉の策」ということばもこの話から生まれました。)


問2  『西遊記』に出てくる話で「サルがお釈迦様の手の中から跳びだせない」(孫猴児跳不出如来佛的手心)といいます。武者小路実篤はこの話をもとに舞台劇を作りました。

第1回 三大奇書雑学王クイズ

三大奇書への造詣を深めていただくために、
クイズをご用意しました!
これができたらあなたも三大奇書通(?)。
(正解と解説は明日、この記事に追加しますのでお楽しみに)
本日は中国のことわざに関する問題です。



問1 日本語の「三人寄れば文殊の知恵」にあたる中国語のことわざに登場する人物は誰でしょう。
  ①呉用水滸伝) ② 三蔵法師西遊記) ③ 諸葛孔明三国志


問2 日本の「噂をすれば影がさす」にあたる中国語のことわざに登場する人物は誰でしょう。
  ① 曹操三国志) ② 魯智深水滸伝)  ③ 猪八戒西遊記

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[正解・解説]
問1  中国語には「三人の靴屋は一人の諸葛亮にあたる」(三個臭皮匠合成一個諸葛亮ということわざがあります。諸葛孔明は知恵者の象徴として考えられていることが分かります。


問2  中国語には曹操のことを話すと曹操がやってくる」(説曹操曹操到)ということわざがあります。「話す」のはたいてい悪口ですから、曹操の悪口をいうと怖い曹操がやってくるぞ、という意味です。英訳ではデビル(悪魔)となるそうです。
やってきた後、曹操は悪口を言っていた人に、いったい何をするんでしょうか?あわわ。

学長観覧

午後2時前、展示室とその周辺がやや緊張に包まれます。
そう、今日は岩崎洋一学長がこの企画展の観覧にお見えになる日なのです。


予定の2時ちょうどに岩崎学長、瀧田宏樹副学長、腰塚武志副学長が来られました。
ご案内は企画展監修の大塚先生がお務めです。


左から腰塚副学長、瀧田副学長、岩崎学長、大塚先生


展示室で上映しているDVD「三国志」(中国中央電視台)のしっかりした時代考証の話題に
なったとき、岩崎先生から「私もNHK人形劇 三国志をみていましたよ」というお話が
ありました。そ、そうなんですか。川本喜八郎の人形に学長も感動していたとは。

人形劇 三国志 全集 一巻 [DVD]

人形劇 三国志 全集 一巻 [DVD]

現在、DVDで発売中

「第4部 ブタとカッパと青龍刀」のコーナーでは、当初日本人が猪八戒をイノシシと
誤読したり、沙悟浄を原作とは異なるカッパに見立てたりした話にご関心を持って
聞いておられたようでした。こういうところで「え? そうだったの」という反応を
いただけて企画側としてもうれしい限り。


大塚先生の説明とあわせて展示を通して見たのは私も初めてでしたが、改めて
「そうだったのか」と思うような発見がありました(単に筆者が不勉強なだけ?)。
時間も予定の30分にぴたりと収めて頂きました。お疲れ様でした。


最後に西原副館長のご案内で学長には芳名録にご記帳頂き、観覧会は無事、
終了です。


短い時間でしたが、ご同行くださった方々やスタッフも含めて背広の男性
ばかりになってしまった展示室は少し、いつもと雰囲気が違います。
ちょうど同じ時間に企画展を見にいらした学生さん。
室内の様子にちょっとびっくりしていましたが、一緒にご観覧くださいました。


(B.K.)

本当のあだ名っていうのは...。

週も明けて、企画展も残り2週間となりました。
(土日は休みなので実質あと10日間。)
質問コーナーにもご質問が寄せられているようなので、そちらはQ&Aコーナーで回答させていただきます。

今日の私のBlogテーマは「水滸伝」から。何となく気になった「あだ名」のこと、です。
「あだ」とは「他」や「別」の意味。あだ名とは、本名のほかに、その人の容姿・性行などの特徴をとらえてつけた別の名前で、愛称として(時にや蔑称として)つけられる名のことです。(と、普通に解説してしまいました。)みなさんも1つや2つは「あだ名」をお持ちではないでしょうか。


水滸伝の主役たちにも全員あだ名がついています。
同じならず者たちの間で呼ばれていたものです。
現代の私たちの感覚で使うあだ名とは違って、字面だけを見ると本当にかっこいい!

九紋竜(くもんりゅう)史進智多星(ちたせい)呉用黒旋風(こくせんぷう)李逵などは、
字面のかっこよさだけではなく、そのあだ名から特徴がわかるような感じですね。
史進の背中には9匹の竜の刺青があったからだそうです。つ、強そう。というより恐そう。


中には日本人には少しわかりづらいあだ名もあります。
病大虫(びょうだいちゅう)薛永、賽仁貴(さいじんき)郭盛、旱地忽律(かんちこつりつ)朱貴、etc。
私からすると「病」とか「虫」とか付いている時点で「そんなあだ名で本当にいいのか?」と思ってしまうのですが、多分ちゃんと意味があるんです。できれば原書にあたって調べてみたいです。(すいません、不勉強者です。ただしこの企画展期間中に調べるというのは絶対的に時間が足りないので、それは後で自分の課題にしておきます。)


水滸伝百八星一覧表というWikipediaの項目がありますので、あだ名が気になる方は一通り見て、まずは想像してみるといいかもしれませんね。
(S.N)

「机」という文字

アンケートで次のような質問をいただきました。


中国語版のドラえもんの表記が、展示の解説では機器猫となっているが、
コミックには器猫とある。ミス?

ドラえもんのひき出しから出てくることに関係?


そうですよね。ドラえもんは机の引き出し=タイムマシンから登場したのでした。
しかし、残念ながら、この「机」は日本語のつくえとは違います。


「机」は「機」の簡体字です。
台湾や香港を除いた中国大陸では、現在、漢字を簡略化した簡体字(簡化字)が使用されています。
簡体字に対し、元の字を繁体字と呼びます。
簡体字についてWikipediaに詳しい説明があります。


というわけでこの「机」は、機械の「機」の意味です。
したがって、「機器猫」は、機械猫、ロボット猫、というようなニュアンスになるようです。


今回の展示の図録やキャプションでは、中国の簡体字や日本の旧字体はなるべく使用せず、
私たちが日常的に使っている漢字で解説を行うこととしました。
そのため解説では「機」を使用しています。どうぞご了承ください。


さて、そうなってくると、中国語でつくえはどう書くの?というのが気になるわけで、
調べてみると「桌」(←IEでは化けてます? 繁体字では「棹」)という字を使うようです。
桌子(棹子)、学習桌(学習棹)など。

もう一つ気になるのは、1956年「漢字簡化方案」が公布される前には、
「机」という字はどんな意味で使われていたのか、ということ。
すみません、これはまだ調べていません。詳しい方、ぜひフォローをお願いします。

(Y. M.)